鞭が好きな話

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僕は鞭が好きだ。

 

しなやかに動く様、風切り音、そして狙った場所にうまく当てることができたときの操っている感。

素晴らしい。

とは言いつつも、鞭が好き=叩かれたい、もしくは叩きたいというSM思考があるわけではない。重要なのは操っている感なのだ。あんなに長い紐状のものを意のままに動かし、目標物を叩く。この操っている感がものすごく好きなのだ。

 

僕が鞭に興味を持った理由は、僕が高校生の時にある鞭を使用するキャラクターに惚れてしまったからである。

 

恐らく一般的に「鞭を使用するキャラクター」と聞くとインディー・ジョーンズを思い浮かべる方もいるかもしれないが、僕が鞭にハマることとなったあるキャラクターとは、The King Of Fightersに出てくるウィップというキャラだ。そのキャラと出会えたおかげで、僕は鞭がとても大好きになった。

 

そのウィップというキャラクターは操鞭術(そうべんじゅつ)という技術を習得した軍人のとてもクールな女の子。セリフ回しも逸脱していて、超必殺技を放つ際の「あなた如きワケないことだわ」や、負けた相手に対して鞭を垂らしながら「這い上がれば?糸は垂れてるわ。」というセリフ、また相手に鞭を巻きつけて横転させ、自分の足元に引っ張って頭を何度も踏みつける際も「アッハッハ(横転、引きずり寄せる)、アーハッハッハッハハ(踏みつける)」というセリフと行動がツボに入り、とても好きになった。誤解ないように何度も伝えるが、決して怪しい意味で好きになったわけではないことを理解してほしい。

 

さて。

そんなウィップを好きになったからには、できるだけウィップに近づきたい。そんな思考をしていた僕は、鞭の練習をすることにした。

そうは言っても鞭なんてそんじょそこらで売っているものでもないし、高校生の僕がSMグッズを購入するわけにもいかない。そもそも僕が求めていた鞭はSMグッズの鞭なんかではなかったけど。

そこで考え付いたのが、縄跳びだ。縄跳びの片方のグリップを外し、もう片方のグリップを持って縄部分を振るうことができるのではないか!と考え付いた。

僕の考えはドンピシャで、グリップがかなり短いが僕の理想の鞭を持つことに成功したのだ。

 

鞭が用意できたらあとは練習あるのみ、と言うことで毎日高校から帰ってきたら自分の家の畑に植わってある大根やらピーマンやらの葉っぱ部分を鞭打つ練習をした。帰ってきて、鞭打って、ご飯食べて鞭打って寝るという生活を繰り返した。それに伴い畑はボロボロになっていった。

僕はとても満足していた。

僕はウィップに近づくために鞭の練習をしている!

しかも何だか上達しており、狙った葉っぱを正確に叩けるようにまでなった。

え、これ俺もKOF出ることができるんじゃないか、と言うほどだ。

 

ある日、妹が「普通のお兄ちゃんが欲しかった」と泣きながら母親に不満をぶつけているのを目の当たりにした。

そう、あの頃の僕は普通の思考の人間ではなかったのだ。(ここでは「普通」の定義については置いておく)

急に自分がしてきた行為が恥ずかしくなり、僕は鞭の練習をやめた。

たった妹の一言で、とはいえども泣かれたのはショックだったのだ。

練習を辞めたことが理由なのかはわからないが、僕がKOFに出るチャンスも失った。

 

もう鞭を振るうことは引退してしまい、鞭を手にすることはなくなったけど、今でもKOFをプレイする際はウィップを使用するし、いまだに一番大好きな2次元のキャラクターだ。それは全く変わっていない。

 

この間久しぶりに実家に帰った際に、雑草が生い茂っている畑を見て、もう一度鞭の練習をしてもいいんじゃないかと、そう思った。